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2020-04

ボジョレヌーボの季節です

 ボジョレヌーボの解禁日がやってきました。
 毎年11月の第三週目の木曜日、今年は先週11月17日でした。さて、著者はワインを語れるほどのワイン通では残念ながらありません。ワインは身体に良いとされているのは、何故かを考えてみましょう。
 OECDの中で心臓病のリスクを見てみると、例えば虚血性心疾患死亡率は低い方から日本、韓国に次いでフランスは第三位にはいっています。あの体格で、あのお腹で、心臓病リスクを下げているのが「赤ワイン」なのではないか、とも噂されている訳です。
(図1)
心疾患

 では、なぜ赤ワインがこんような効能を持っているのでしょうか?その理由がポリフェノールにあるのではないか、と常々噂されてきました。
 そこで、今回は季節柄、ポリフェノールについて考えてみたいと思います。
 先に結論を述べておくと、ポリフェノールはラジカルトラッパー(活性酸素 O2- をトラップ・捕捉する)として身体に役に立っています。ポリフェノールは野菜・木の実を食べると沢山摂取できます。ポリフェノールを摂るためにワインを飲んでアルコール摂取量を増やすよりは、有色野菜を食べましょう!

# ポリフェノールとは?
 フェノールは、中学の化学で学んだように、ベンゼン環に水酸基が一つついた構造をしています。
このベンゼン環が複数(Poly-)結合した構造で、水酸基(-OH) がついた構造をしている化合物がポリフェノールということになります。
(図2) ポリフェノールとは何か
ポリフェノール

 生体に含まれるポリフェノールには多くの種類が存在します。構造式で見てみましょう。
 ベンゼン環が複数見られますが、植物の細胞ではフェニルアラニンから合成されたクマル酸CoAにマロニルCoAが重合してできるカルコンから合成されています。ポリフェノールは、ラジカルトラッパーとして生体内では役に立っています。ラジカルトラッパーとして、C=C の二重結合の構造が活性酸素ラジカル(O2-)のターゲットになる訳です。
(図3)りんごの主なポリフェノール成分の構造式
ポリフェノール構造式

 何故、植物はこんなラジカルトラッパーをわざわざ自分で合成しているのでしょうか?それは、光合成の過程で酸化還元反応を繰返していると、電子がO2にぶつかって/1電子還元して、活性酸素(O2-)というラジカルを生成してしまうからです。ラジカルは、有機物/生体物質のC=C の二重結合をターゲットにして酸化してしまいますので、植物は自分自身を守るすべである「抗酸化物質」を自分自身で合成している、ということでしょう。
 因みに、動物では、細胞内のミトコンドリアでの電子伝達系でO2を electron acceptor としてATP合成を行う(植物にも勿論存在しているのですが)際に、漏れ出てきた電子とO2が反応して活性酸素(O2-)は生成されています。
注) ラジカルは、radical に反応する「反応性の高い物質」という意味です。電子のlone pair が存在するので、1秒もかからずに他分子と反応し、lone pair を解消します。

# ポリフェノールの種類
 大きく、モノマーと、幾つも重なって結合したポリマーに分かれます。
(図4)ポリフェノールの分類
ポリフェノール分類1
ポリフェノール分類2

 モノマーの方が含有量は多いのですが、どのような食物 - これは人間の都合で見た呼び名ですね - 植物に、どのようなポリフェノールが含まれているのかを見てみましょう。フラボノイドは、図2のアントシアニジンの構造を骨格としています。Flavo- と名前はラテン語の flavus (黄色)に由来していて、植物では実や葉の色をつけている成分なのです。フラボノイドが分解されたアントシアンは、落ち葉の赤い色です。
 ということで、フラボノイドが有色野菜に沢山含有されていることが理解できると思います。そこで、含有量で見てみると、こんな感じになります。
(図5)食べ物中のポリフェノール含有量
ポリフェノール含有量1
ポリフェノール含有量2

 噂通り、赤ワインに沢山含まれていますが、コーヒー、紅茶、緑茶といった飲み物も負けてはいないようです。下の方が、野菜・果物類に含まれるポリフェノール量です。こうやって並べてみると、お茶やワインで大量に含まれているのは、ノンフラボノイドのコーヒー酸やタンニン酸ということになりそうです。元来、抗酸化作用の強いフラボノイドは、植物本体に含まれるように思えてくるデータです。
 少し脇道にそれますが、最近では、アセロラ、アサイー等の実のポリフェノール含有量が、このコーヒー、赤ワインレベルかそれ以上、とも宣伝されています。ここまで見てきたように、ポリフェノールといっても、フラボノイドなのかタンニン酸なのか?抗酸化作用の評価はどうなのか?といった質的な問題も残っています。ここは、可能性があるというレベルに留めておきましょう。

# 実際のラジカルトラップ(捕捉)能力
  ここまでで、どんな物質がどの位の量含まれているのかは、イメージできたと思います。では、実際に機能しているのでしょうか?我々が食べて、消化吸収というプロセスを経て、どのような形で血中に入り、細胞に到達し、どこでどのように作用しているのでしょうか?
 そこは、調べてみても不明でした。
 ポリフェノールの活性酸素捕捉(ラジカルトラップ)能をみても、信頼に足るデータはなかなか見つかりませんでした。実際、個体である植物/食べ物に含まれる活性を測定しようとすると、抽出するプロセスが入ってくるので、信頼のおける測定系を組むのは難しいことは想像に難くないところです。

 最後に、一体ポリフェノールは、どの程度摂取するのが良いのだろうか、考えてみましょう。ネスレ日本が、2010年10月1日の「コーヒーの日」にあわせて、調査会社のイードとともに実施した「日本人とポリフェノール」に関する調査結果を発表しています。コーヒーは、赤ワインに次いでポリフェノール含有量が多いので、ネスレとしても力が入ります。
 それによると、ポリフェノール理想摂取量は約1500mg、実際の日本人の1日のポリフェノール摂取量は平均1010mg と目標値の約2/3 に留まっていました。図5のデータは、飲料だと100ml当たりの含有量(mg)になります。ワインやコーヒーを700ml /日 飲みましょう、ということになるのですが、「現状よりも500mg 摂取を増やす」と考えるとコーヒー250ml 少し多目の1杯が必要、という解釈もできそうです。
 ここでも、ポリフェノールの質も問題になるのでしょう。タンニンよりは、フラボノイドの方が活性酸素捕捉能は高いように見えますので、理想摂取量といってもタンニンとフラボノイドでは変わってくるでしょう。ラジカルトラッパーの代表格、ビタミンCやビタミンEの摂取量によっても、ポリフェノールの理想摂取量は影響を受けるように思います。ということで総合的には評価が難しいので、まずは野菜を沢山摂取するのが身体には良い、というごく当たり前の結論にしかならないようです。

 ポリフェノールについて、少し理解が進みましたが、他のビタミン類も含めて総合的に考えるのは結構難しい話です。虫の眼に留まらず、鳥の眼・魚の眼にもなって考えてみる習慣の必要性を感じると共に、評価軸の切り方、長所・短所の二面性(良い事だけで、悪い面をもたないモノなど存在しません)といった「評価」の難しさも今回改めて感じました。エビデンスは単純化した系でしかとれないので、どうbig data を評価してゆくのか複眼的な目線が問われます。

 「赤ワインが健康に良い?悪い?」という単純な「二分法思考」では片付かない、複眼的な目で見てみましょう、というある意味皆さまの期待に沿わない落ちになってしまいました。野菜を十分に摂って、赤ワインは人生に華を添える程度、というのも一つの美意識でしょう。正解は一人一人で異なります。
 期待外れという意味では申し訳なかったのですが、こういった複眼的視点で語ってゆくのが私の blog の価値ではないかとも考えております。
 いつも、最後までお読み頂き、有難うございます。皆さまあってのblogです、感謝感謝です。




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プロフィール

scaramouche

Author:scaramouche
I am an Executive coach, Consultant and Negotiator working in Tokyo, Japan. In charge with develop people, leadership management and motivation management, supporting president level, executive level and organization level.
Concurrently a visiting lecturer/researcher in Ohmae Kenichi School of Business.

After earning MD and PhD in medicine, I experienced medical practice as an anesthesiologist and ICU expert followed by scientific research work of molecular biology and molecular genetics. Following academic experiences, I joined to a global pharmaceutical company, and experienced Drug Discovery projects, Biomarker works in global Biomarker group, and Drug Development projects in the global context of drug development. Through my medical and business career, I have shown leadership involving internal and external stakeholders to create the value of projects.

Specialties: MBA (Business strategy, Marketing, and People Development), GLLC Certified Coach, JCA Certified Medical Coach, ABNLP Certified NLP practitioner, JNLPA Certified NLP practitioner, JSNS Certified Negotiation analyst, MD.Sc, PhD (Medical), Faculty Fellow of Pharmaceutical Medicine, Certification by the Training course of Biomedical Ethics and Law (Tokyo University).

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