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2016-10

脳の集中力も疲れも、瞑想も、扁桃体が鍵を握っている

皆さま、いつも本 blog をお読みくださり、有難うございます。考えた事を智恵としてまとめた形で残して行ければと思いますが、少しでも皆さまのお役に立てるならこれほど嬉しいことはございません。皆さまからのご支援に、ただただ感謝致しております。
 すっかり秋らしい気候が戻って参りました。夏の暑さと台風がずっと続いていたかと思うともう10月半ば、年末の背中が見え始める時期になってしまいました。季節感と暦が合っていないので、どうもリズムが崩れてしまいます。
 神無月前半は24節気では「寒露」、朝露の季節です。真夏から一騎に露を結ぶ気温、自律神経のコントロール範囲外、体調も崩れてしまいます。外来でも、この季節と気圧の変化に体調を崩している患者さまをちょこちょこ拝見致しております。

 さて、前回は「修行では、どのように雑念を排するのか」というテーマでした。我々の心は感情に振り回されている状態で、なかなか集中しきれていないのが実情です。1時間仕事に集中しようとしても、いろいろな雑念が頭をもたげます。LINEのメッセージや、デスクでメールのアラートが立ち上がってくるのでは、最悪です。その都度集中が途切れているのですが、その状況に慣れ切ってしまうと、「集中できていない」ことにさえ気づいていない状況にもなっている人もいるのではないでしょうか。
 その感情に振り回されないための施策が、伝統的には禅や仏教の修行の数々であり、現代風だと自立訓練法であり、最近注目を集めているマインドフルネスです。弊社でも、実際にこういったプログラムを提供していると、瞑想のトレーニングを行うといっても、何やら胡散臭い(?)宗教に感じたり、個々人の業績向上といった目標に対してこの手段が有効なのかどうかどうも腹落ちしなかったり、と取組む意義が感じられないという感想をよく耳にします。
 前回も、「意思とは無関係に感情に翻弄されている」という一節がありましたが、脳のどのようなメカニズムにより雑念が邪魔になるのか、集中が低下するのかといった所を今回はまとめてみたいと考えました。最後までお付き合い頂ければ、幸いです。

# 脳は大食漢
 脳は体重の約2%を占めるに過ぎないのですが、体が消費している全エネルギーの約20%を使っている大食漢です。これだけのエネルギーが何に使われているのでしょうか?そんなに考えているのでしょうか?実は、この約80%が、(脳の)休息時に行われている神経活動、Default Mode Network (DMN)によって消費されています。アクティブな活動中には鎮静化しており、休息時には活発に興奮する神経細胞群が脳には存在しているのです。DMNは、「ボーっとしている時」「瞬きした直後」等に活性化され、意識と無意識をつなぐ信号を調節しているとも考えられています。解剖学的には左右の大脳が合わさった内側面が主な部位で、前頭葉内側面(中でも後部帯状回と楔前部はDMN の中心的役割を果たすと考えられています)、頭頂連合野の後半部、中側頭回などが該当しています(難解でスミマセン)。
 DMNは、2001年に提唱された比較的新しい概念ですが、脳内ネットワークについて少し整理してみます。

# 脳内ネットワークとDMN
 2000年代以後,神経機能画像研究によって,デフォルト・モード・ネットワーク(default-mode network; DMN)などの,前頭・頭頂連合野に広く分布する大規模な機能的ネットワークの存在が明らかになってきました。また,安静状態機能的MRI(resting-state functional MRI; rs-fMRI)をもちいた研究で,これらの大規模機能的ネットワークは,特定の課題や行為に従事していない安静状態でも,自発的に同期して活動していることが解ってきました。
 これら一連のrs-fMRI研究により,DMNの他にも6~8個の大規模機能的ネットワークが存在していることが明らかにされてきました。具体的には、背側注意ネットワーク(dorsal attention network; DAN),前頭頭頂制御ネットワーク(fronto-parietal control network;遂行機能ネットワーク)、顕著性ネットワーク、体性感覚運動ネットワーク、視覚ネットワーク、聴覚ネットワーク、小脳ネットワークなどで、脳ネットワークの基本的な構成要素の全貌が見えてきたという事です(難解で申し訳ありません)。その中でもDMNは最大の volume zone です。
 DMNを担う領域は、ADHD、自閉症、統合失調症、鬱病、アルツハイマー病などで異常を認める領域とも重なっていることから、DMNの異常と病気が結びつく可能性も今後期待されています。更に興味深いのは、DMNを担う領域は,内的思考において活性化される脳領域とよく一致している点です。また,他者のこころを推し量る“こころの理論”をになう社会脳とも,その活動領域が大きく重なっています。
 DMNは安静時に活動上昇を示す一方で,認知課題を遂行しているときは,課題に関連した領域は活動を高めるのに対してDMNは活動の低下を示すことが多いと報告されています。即ち、集中しているときよりも、ボーっとしている時の方がエネルギー消費は大きく、(脳が)疲れるのかもしれませんね。

# 脳から疲労する
 このDMNが活性化されている状態が、頭のなかでさまざまな雑念が渦巻いている状態です。このように、DMNは「心がさまよっているときに働く回路」として知られていますが、人間の脳は、なんと1日のおよそ半分以上を心さまようことに費やしていると考えられています。この上に何か、考えるタスクを加えても、消費エネルギーは約5%程度しか増えないそうです。即ち、脳のアイドリング状態、ボーっとしていたり、雑念やイライラに追われている状態が最もエネルギーを消費し、脳を疲労に追いやっているようです。
更に厄介な事に、脳の疲労は、自律神経系・内分泌系を介して身体に影響を及ぼします。身体への影響が蓄積すると、心身症と呼ばれる状態に至るのです。
 禅、瞑想、マインドフルネスといった介入法においては、未来や過去のことを考えて無駄遣いしているエネルギーをすべて「今、ここ」の気づきに集中することを目指しています。心を集中させることにより、エネルギーの無駄遣いもなくなり、雑念に追われることもなくなるのが目的でした。脳の中で起こっていることは、DMNを抑制することにより「脳から疲労する」状態も改善できるということです。

# 元来、意思は感情をコントロールすることはできない
 前回のblog でも、「人間(動物でも同じと思いますが)、事実を見て、何が起こったか考え、理解し、対応を考える前に、感情が反応してしまう」と書きましたが、感情がまず反応するため、「自分が何を感じているのか知らない時間」ができてしまいます。食欲、性欲のような本能的行動とともに快・不快、喜怒哀楽のような情動として表出されるような心の働きには扁桃体という脳の中でも最も原始的な部分が担っているのに対して、理性的な思考・判断に基づいた社会行動、創造性、意志決定は前頭葉の働きによりますが、この二つの脳は互いに独立して機能しているのです。
 うつ病や不安障害といった疾患では、この扁桃体・海馬を中心とした大脳辺縁系の暴走によるとも考えられております。勿論、元来いろんな病因の結果抑うつ気分や不安・焦燥感が高まっているヘテロな病態の集合体ですので、これでは十分に説明できないケースも見受けられますが。このように脳に過度なストレスがかかると、本能や感情を司る扁桃体が暴走をはじめるのです。理性を司る前頭葉によってこの扁桃体の暴走を抑えるには、それなりのトレーニングが必要になってくるのです。
 アウシュビッツより生還した精神科医ヴィクトール・フランケルの言葉を借りれば、「刺激と反応とのあいだには間隔がある。その間隔に、反応を選ぶ私たちの自由と力がある。私たちの反応の中には、成長と幸せがある」。感情の暴走の前に、一度立ち止まって、自分の感情を客観的に眺めることができると、エネルギーの無駄遣いもなくなり、「成長と幸せ」につながると感じているのです。
 このように一旦立ち止まるには、自分の意識を「今、ここに」集中して、客観的に自分の感情・扁桃体の暴走を眺めるトレーニングが必要になります。注意を統制する能力を伸ばせば、情動に対する自分の反応の仕方に大きな影響を与えられる事は、神経画像研究者のジュリー・プレツィンスキー=ルイスらによる研究データによっても示唆されています。マインドフルネスの提唱者の一人ジョン・カバット・ジンは、マインドフルネスを「特別な形、つまり意図的に、今の瞬間に、評価や判断とは無縁の形で注意を払う事」と定義しています。感情が暴走するのを、「評価や判断」することなく静かに眺めることで、心の平穏を保つことができ、集中力を高めることができるのです。

 今回は、DMNと扁桃体・海馬(大脳辺縁系)の暴走が、エネルギーを消費し脳の疲労に繋がるという内容でご紹介いたしました。これからも、ではどのようにコントロールしてゆけるのか、ご一緒に考えてゆきたいと思います。
今回も長文になってしまいました。ここまでお読み頂き、誠に有難うございました。



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プロフィール

scaramouche

Author:scaramouche
I am an Executive coach, Consultant and Negotiator working in Tokyo, Japan. In charge with develop people, leadership management and motivation management, supporting president level, executive level and organization level.
Concurrently a visiting lecturer/researcher in Ohmae Kenichi School of Business.

After earning MD and PhD in medicine, I experienced medical practice as an anesthesiologist and ICU expert followed by scientific research work of molecular biology and molecular genetics. Following academic experiences, I joined to a global pharmaceutical company, and experienced Drug Discovery projects, Biomarker works in global Biomarker group, and Drug Development projects in the global context of drug development. Through my medical and business career, I have shown leadership involving internal and external stakeholders to create the value of projects.

Specialties: MBA (Business strategy, Marketing, and People Development), GLLC Certified Coach, JCA Certified Medical Coach, ABNLP Certified NLP practitioner, JNLPA Certified NLP practitioner, JSNS Certified Negotiation analyst, MD.Sc, PhD (Medical), Faculty Fellow of Pharmaceutical Medicine, Certification by the Training course of Biomedical Ethics and Law (Tokyo University).

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