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2013-01

書評 : 現実を視よ 柳井 正 著 (PHP研究所)

 一月も最後の日を迎えて、もう一年の8%があっという間に過ぎてしまったことに改めて驚かされます。この「あっという間に」という感覚を持っている限り、振り返るまでもなく大した仕事ができていない事に自分でも唖然としている所です。
 本書は、こんな平和ボケしてしまった日本人に「喝を入れる」一冊で、自らに対する戒めのためにも改めてここに取り上げることにしてみました。「現実を看よ」というタイトルからも、我々がいかに現実が見えていないか、現実を知らずに井の中の蛙・茹で蛙になっているのかを、ファーストリテイリングの柳井 正 社長が激白せずにはおられないという迫力に満ちた一冊です。
 自身でもお書きになられておられるように、このようなメッセージの出し方は一経営者としては正しい判断ではないのかも知れません。しかし、祖国日本を愛する一人の日本人として、日本の復活を願うと、既に遅きに失した感もあって、激しい表現にならざるを得ない感情の奔流を諸処に感じさせてくれます。大前研一学長との共著で、2010年9月に出版された「この国を出よ」(現在は小学館文庫)のある意味で続編でもあり、同じロジックに乗っている所も多々散見されますが、前著で「もう黙っていられない」と吐白されていた柳井 社長が更に黙ってられない状況に我が国もなりつつある危機感が伝わってきます。
 この気迫、というか感情の奔流に一人一人の国民が立ち上がって欲しいと願う一冊です。

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 プロローグのタイトルにもあるように「成長しなければ、即死する」ほど、変化が激しい時代です。かつて先進国は、TVを例に挙げると、白黒→カラー→ブラウン管→デジタルといった進化を何十年もかかって遂げてきました。我々の身体には、そのスピード感が染み付いています。しかし、新興国では先進国のかつての歩みをたどってくるのではなく、いきなりデジタルの舞台で戦いが始まります。勿論、皆さん言葉の上ではよく知っています。しかし、現実に対応行動に移せないのが人間です。悲しいかな、身体に染み付いた習慣は、意識することなく消し去ることは容易ではないのです。
 我々に必要なことは、過去を「意識的」「積極的」にイレースしてゆくことなのです。断捨離が大流行ですが、捨てることなく新しい一歩は踏み出せないのではないでしょうか。自分にとって価値・意味のあるものを「残す」という視点に加えて、新陳代謝を加速するために「必要なもの」も意識的に捨てる、必要だからこそ新しいものを取り入れるハングリーさが求められるように感じます。
 特に団塊の世代の皆さまは、高度成長時代の「成功体験」が記憶に染み付いておられます。20年に渡るデフレの時代、収入は減り、おこずかいも減り、と「いいことないな~」と嘆息していると、いつまでも成功体験(何年前のことでしょうか?)にしがみついていたいという気持ちも解らないではありません。我々は、自尊心が満たされないと生きてはゆけないのです。
 今の時代、「ハングリー」感覚は、自ら意識的に取り入れる不断の努力が必要になっているのかも知れません。

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 このブログを読んで頂きている読者の皆さまは(感謝、感謝です)、Steve Jobs の語った ‘Stay hungry, stay foolish’ はご存じでしょう。「グレリンを介して、空腹が記憶力など脳の機能を向上させる」と結論される、Tamas L Horvath氏( Yale University School of Medicine)らの研究が、 2006年にNature Neuroscience誌の電子版に掲載されました(*1)。最近では、空腹になると記憶力が上がることを、同じくショウジョウバエの実験で示されたと、東京都医学総合研究所などのチームが2013年1月25日号の米科学誌サイエンスに発表しています。
 と、ネズミとショウジョウバエで示されたのですが、実際に空腹の時の方は脳の活動・記憶力には有利なようです。話が、本物の’hungry’に飛んでしまい申し訳なかったのですが、食べ物に不自由することのない日常生活でも意識的に’physically hungry’さを求める必要があるように、たとえ目には見えなくても ’mentally hungry’ さも意識して作り出してゆく必要があることに、今回のブログを書いていて気づかされました。

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 それでも、我が国は変わりません。「変えることのできないものを受入れる柔軟性と、変えることのできるものを変える勇気」が、ビジネスでも人生でも求められることは読者の皆さまには納得感を共有できるのではないでしょうか。
 違う視点からみると、「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えることができる」という風にも形式知化することができるでしょう。この2つの表現は全く同じ現象を述べている訳ではありませんが、本質的には等しい内容でしょう。
 いずれにしても、意識的に、積極的に取り組んでゆかないと成果にはつながらないということではないでしょうか。第三者のサポートが機能する領域です。


【引用】
*1 ‘Ghrelin controls hippocampal spine synapse density and memory performance’
http://www.nature.com/neuro/journal/v9/n3/abs/nn1656.html






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プロフィール

scaramouche

Author:scaramouche
I am an Executive coach, Consultant and Negotiator working in Tokyo, Japan. In charge with develop people, leadership management and motivation management, supporting president level, executive level and organization level.
Concurrently a visiting lecturer/researcher in Ohmae Kenichi School of Business.

After earning MD and PhD in medicine, I experienced medical practice as an anesthesiologist and ICU expert followed by scientific research work of molecular biology and molecular genetics. Following academic experiences, I joined to a global pharmaceutical company, and experienced Drug Discovery projects, Biomarker works in global Biomarker group, and Drug Development projects in the global context of drug development. Through my medical and business career, I have shown leadership involving internal and external stakeholders to create the value of projects.

Specialties: MBA (Business strategy, Marketing, and People Development), GLLC Certified Coach, JCA Certified Medical Coach, ABNLP Certified NLP practitioner, JNLPA Certified NLP practitioner, JSNS Certified Negotiation analyst, MD.Sc, PhD (Medical), Faculty Fellow of Pharmaceutical Medicine, Certification by the Training course of Biomedical Ethics and Law (Tokyo University).

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