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2012-02

まず「型」にはめてみよう

神社にときどきお参りに行きます。大安の日の午前中、可能な時に。
そこで、気が付くのは、誰もが「型に従って」行動していること。
一の鳥居で一礼して、二の鳥居でまた一礼して、手水舎で体を清めて参拝します。中には、参道の中央は神様がお通りになられると理解していて、ちゃんと両脇を選んで歩いておられる方も。作法が表示してある所も多いこともありますが、皆さん(表示を見ながら)二拝二拍手一拝 に従って参拝されていかれます。
(参考)
神社参拝の作法:鳥居のくぐり方~玉串拝礼

 このように、礼儀作法の型が明示してあると、それに従おうとするのは日本人の資質なのではないでしょうか。神社仏閣という環境が、そうさせるのかも知れませんが。

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 芸術・習い事の世界でも、型の重要性が語り継がれてきました。今をさかのぼること、16世紀の能を確立した世阿弥の「風姿花伝」にも、守・破・離の思想が初めて登場しています。守って型に着き、破って型へ出て、離れて型を生む。この思想は、日本的様式行為を作り上げ、禅にも、茶道にも、また武芸にも開花結実していきました。
「型より入りて型より出づる」という言い方でも良く耳にします。宮城道雄は、芸道は「型に入って型に出ることに尽きます」ということを頻りに言っていたそうです。茶道をイメージしてもらうと、見よう見まねで「型」を覚える所から始まり、「何故、このような手順・作法をとるのか」を考えて、「型」の意義を理解し、体得するレベルまで高めてその本質を理解していれば、同じ状況に対しても「型」とは別の形で同じ意味を表現することも可能でしょう。また、「型にない」想定外の状況が起こっても自然と対応できるようになると思います。

 なお、観阿弥・世阿弥の「風姿花伝」において、序破急は能構成をさしていました。「あのころ、能の序破急がいつしか守破離に発展した。そう、考えてまちがいはない」と松岡正剛氏の解説を見かけた事がありますが、言い得て妙と感じます。千葉周作の稽古とは何かを説いた書『剣法秘訣』では、「序破急の拍子を追うよりも、守破離の筋目を通すことが稽古に欠かせない」述べられています。序破急は拍子であって、守破離は筋目、と守破離の思想に鋭く切り込んだ的確な表現と感じます。剣の道ですので、「拍子も筋目もどちらも肝要だが、筋目を知って拍子を打てばもっといい」という千葉周作のメッセージが聴こえてくるようです。

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 芸術・稽古事の世界では、このように「守破離」を体得するのに、膨大な時間と労力を掛けます。俗に、一芸を身につける・プロフェッショナルになるのに1万時間の取り組みが必要と言われます。1万時間ということは、3時間/日 x 365日で約千時間ですから、毎日3時間の取り組み・稽古を10年間続けて体得できるレベル、ということになります。
ビジネスの世界でも、世の中の複雑度が高まるにつれて、体得するべき(?)マネジメントスキルやビジネススキルがどんどんと増えてきています。毎日多くの業務を抱える管理職にとって、マネジメントスキルに1万時間、ビジネススキルに1万時間と言われても、それをこなすことのできるビジネスマンはごく一部でしょう。
では、現代のビジネスマンが身につけるべきスキルはどのように考えればよいでしょうか?そして、どのようなプログラムを組めば、実際に身につけてゆくことができるでしょうか?
 そのヒントを神社の参拝に見たようにも思います。

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 参拝風景で、誰もが「型に従って」行動しているところを見ていると、やはり「型にはめる」ことは解り易い指標になると思います。現代の日本人は、学校教育で「受け身型」の学習スタイルになれているのも影響が大きいかもしれません、「マニュアル通りに動く」ことを受け入れる人も多いでしょうし、「マニュアルがないと/指示命令がないと何していいか分からない」という声もよく聞きます。その意味では、「守って型に着く」という意味も、観阿弥・世阿弥の時代は、「もっと自由奔放な人々を、まず型通り行動させる」位のニュアンスだったのかも知れません。現代のようには、「指示待ち」タイプは多くはなかったでしょう。

1) まず、関心をもたせる
参拝風景でも、まず「関心のある人々」が選択的に集まっている、事は「型」に従う行動がとれる前提条件になるでしょう。マネジメントスキルやビジネススキルを学ぶにも、まず関心があって、何を目指すために学ぶのか、「どのような自分になりたい」と思って学ぶのか、といった動機を本人が明確に持つ事が前提になると思います。

2) 型を特定して、明確化する
 時代の複雑化に伴って、学ぶ対象となるマネジメントスキルやビジネススキルは益々増加の一途をたどっています。実際に、管理職の方に「全部をマスターして下さい」と要求するのは、もはや不可能ではないかと思います。
 では、どの項目を抽出して、リストすれば良いでしょうか。実際のコーチングでこれらのスキルを扱っていても、一人一人の強み・弱みやその方の役割を考慮して、カスタマイズしたリストを作成する必要があるように思います。一人一人「どのような自分になりたいか」といった理想の姿をイメージし、そのためも必要なスキルをリストし、目標を設定して、実際に行動に出してスキルを獲得していってもらえるようにモチベーションを高めて行くプロセスをとります。
 一人一人の「将来の理想像」「現在の役割」とその方の強み・現在のスキル・リソースを考慮してリストを作ってゆく、ということです。同じリストを使って、誰に対しても一律に同じものを求める時代は過去のものと言えるでしょう。

3) 「型」の意味を理解する
 参拝風景を見ていても、誰もが「型」の意味を理解している訳ではないでしょう。それでも、「型に従う」ことはできます。そして、「型に従う」文化を作り上げることは可能でしょう。その文化の中で、「型」に興味をもち、その意味を理解してゆく人が出てくれば、好循環が生まれて行くのではないでしょうか。特に、現代は個人がWebに発信してゆくことのできる時代です。ローカルな文化の形成に、個人からの発信がもつ影響力が大きくなってきています。
 ビジネスにも、同じプロセスが活用できそうです。一人一人が、マネジメントスキルやビジネススキル習得に取り組んでゆく上で、「型」の意義に関心をもち、「型」の意味を理解していって、更に発信し、共有してゆく文化を作り上げて行く事ができると、更にポジティブ・フィードバックが掛りそうです。

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皆さんも、やることを指示されても、それだけでやる気が下がってしまうことを、これまでに経験されてきたと思います。膨大なマネジメントスキルやビジネススキルのリストを前にして、立ちすくんでしまった経験をお持ちの方もあるでしょう。
思い起こすと、ビジネススクールは、「スタートから全力疾走で飛び出し、2年間力の限り走り切る」という2年間でした。2年間限定だからこそできたようなもので、これが一生続くとなると、ちょっと考えてしまいます。と在学時には思っていましたが、卒業してみてもこのペースを外挿したような状況が続いているのが実際のビジネスの世界と実感しています。
そのような現実を前にして、一人一人が取り組んでゆくことをカスタマイズして、「型」から入り、関心を高めてもらい、「型」の意味に自分自身で取り組み、組織として考え・深めてゆく文化を作り上げて行くことができれば人材育成につながるのではないでしょうか。
まず、入りやすいように「型にはめてみる」というのは、良いきっかけ作りになるでしょう。
一人一人にカスタマイズした人材育成や、組織文化の育成は、ビジネスコーチングが必要な領域ではないかと思います。



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プロフィール

scaramouche

Author:scaramouche
I am an Executive coach, Consultant and Negotiator working in Tokyo, Japan. In charge with develop people, leadership management and motivation management, supporting president level, executive level and organization level.
Concurrently a visiting lecturer/researcher in Ohmae Kenichi School of Business.

After earning MD and PhD in medicine, I experienced medical practice as an anesthesiologist and ICU expert followed by scientific research work of molecular biology and molecular genetics. Following academic experiences, I joined to a global pharmaceutical company, and experienced Drug Discovery projects, Biomarker works in global Biomarker group, and Drug Development projects in the global context of drug development. Through my medical and business career, I have shown leadership involving internal and external stakeholders to create the value of projects.

Specialties: MBA (Business strategy, Marketing, and People Development), GLLC Certified Coach, JCA Certified Medical Coach, ABNLP Certified NLP practitioner, JNLPA Certified NLP practitioner, JSNS Certified Negotiation analyst, MD.Sc, PhD (Medical), Faculty Fellow of Pharmaceutical Medicine, Certification by the Training course of Biomedical Ethics and Law (Tokyo University).

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