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2020-06

型を体得しないと「型破り」にはなれません‐「21世紀の型破り」という視点

 以前にも、取り上げたことのある「守・破・離」について、改めて別の角度からも考えてみたいと思い取り上げてみました。
 まず「型」にはめてみよう

「守・破・離」は、歴史的にも「道」の概念が生活に深く浸透している日本人にとっては、身近な言葉であり概念です。世阿弥が風姿花伝書で説いているだけあって、歌舞伎の世界を代表する坂東玉三郎氏と中村勘三郎氏の言葉を引用して、改めて近現代風に味わってみましょう。

 「型破りな演技は、型を知らずにはできない
  型を知らずにやるのは、型なしというのだ」

“奇跡の女形”と呼ばれる歌舞伎俳優・坂東玉三郎さんが、14歳で玉三郎を襲名した頃、師匠である守田勘弥さんから言われた言葉だそうです。
NHKの「プロフェッショナルを導いた言葉」という番組で紹介されていたのを引用致します。

 「若い人はすぐ型破りをやりたがるけれど、型を会得した人間がそれを破ることを『型破り』というのであって、型のない人間がそれをやろうとするのは、ただの『かたなし』です」

 同じく歌舞伎の、食道がんの闘病の末に昨年12月に亡くなられた中村勘三郎さんの言葉です。この春銀座歌舞伎座の改修が完了し、お披露目に勘三郎氏の姿が見られないのを現実にして、失ったものの大きさを実感させられたのではないでしょうか。オリジナルはWeb上に見つけられなかったのですが、blog など多くのサイトに引用されています。
 他の「道」では、例えば将棋や囲碁の「定石」もお互いの最善手の応酬から成り立っています。定石を理解し覚えるまでには、定石から外れた手に対してどのように対応するのかも理解して初めてマスターしたと言うことができます。勉強不十分の間は、定石はずれの手を打たれて、正しく対応できずに形勢が悪くなったりします。そのプロセスを通じてその道での発想やセンスを身につけて行きます。
 サイエンスなどの発見やイノベーションでも、成功に至る過程で数限りない失敗が積み上げられています。料理のレシピでも同じでしょう。その失敗の歴史を知らずに、「よし、ここを変えるともっと美味しくなる」と思いつきだけでチャレンジしても、まず上手くはいきません。既に誰かが試してみて、失敗だったことを確認しているケースが殆どです。今に残っている風習・習慣も、長い歴史の中で数限りないバリエーションが試された上で、その結果生き残った「最も合理的な社会的ソリューション」ということができるでしょう。
 我々は、練習し体得するプロセスを通じて、チャレンジして失敗を重ねるプロセスを通じて、「型」が出来上がった過去の経験を追体験し、なぜその「型」が出来上がったのかを体験し、「型」に至る価値観やセンスを体得するのです。

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 実際に「型を破る」ために血のにじむような努力を重ねている人は、社会でもごく一部のトッププレーヤーでしょう。我流という「かたなし」でやっておられる人も沢山頭に浮かびますが、「型」を表面的になぞっているだけの人、即ち「どうしてこの型に洗練されたのか」という意義・いきさつを考えていない人も多いのではでしょうか。
 意義・いきさつを考えていないのは、日本人の社会観や価値観に寄るところも大きいように思います。この点は「なぜ、日本人はルール作りに参加しないのか」とも共通の本質があるように感じますので、今回少し考えてみたいと思います。

 これまでに、日本が国際的に有利な戦いの場で欧米諸国にルールを変更されて「ジャパン・バッシング」という文字がメディアに踊った光景を何度も見てきました。例えば、スキージャンプ競技におけるスキー板の長さ制限に関するルール変更で、長野五輪以降日本選手は勝てなくなった例、F1でターボ・エンジンを搭載したホンダ車に対し、ターボ・エンジン禁止のルールが設定された例などが思い出されます。
 スキージャンプ競技の例では、1998年の長野冬季オリンピックにおいて舟木、原田のノーマルヒルとラージヒルでのメダルと団体で金メダル獲得と日本人選手は大活躍しました、その翌年これまで「身長+80 cm 」だったスキー板長さ制限が「身長の最大146%(最長で270センチ)まで」に変更されました。身長に劣る日本人選手のはけるスキー板が短くなる変更で、それ以降日本のジャンプ陣の低迷が続いたことは皆さんも記憶しておられることと思います。
 また、1988年のF1では、ドライバーにアラン・プロストとアイルトン・セナを擁したマクラーレン・ホンダチームは、16戦中15戦で優勝という「無敵」の名を欲しいままにしました。その翌年、国際自動車連盟(FIA)は、「ターボ・エンジンを禁止する」ルール変更を発表しています。
 その他では、柔道(日本の美学は、一本勝ちです)のレスリング化など、この類の(一見?)日本に不利になる「ルール変更」の例は枚挙にいとまがありません。

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 欧米諸国はこのように自らが有利なようにルールを作る戦略を堂々と取っています。
欧州のビジネス戦略でも、EUが独自に作ったルールをてこに欧州企業の競争力を高める動きが含まれています。国際会計基準、リチウム電池に関する指令から、電気自動車の充電コンセントの国際規格などの例が頭に浮かんできます。
 一方、日本人は「ルールを守る」ことを行動の美学と考える価値観を持っているのではないでしょうか。たいていの日本人にとって、ルールは「他の誰かが作るもの」であって、行動の美学は「ルールを守る中で最善の努力をする」ことだと感じているように思います。江戸時代から、ルールは官やお上といった権威ある人・組織が作るもので、下々の者はそれを守るだけで、口を出すなどと畏れ多いといったところでしょう。
 これに対して欧米人にとってルールは「決めごと」であり、守ることは大切だが、自分にとり不利であれば、変更・交渉するものと理解しているのでしょう。ルールは石に刻まれた絶対なものではなく、あくまで「スタンダード」・「目安」なのです。
 欧米(といってもアメリカは、欧州からの移民ですが)の市民自治においては、政治家は市民の代表であり、自分達の意見・権利の代弁者です。ルールも、代表者達が決めて下に下ろすのではなく、市民が提案して上に上げて行くものです。なぜ、そのようなルールにするのか、そのルールはどのような意味・意義・目的があるのか、そのルールによって何を達成したいのか、を考え、議論している主体は、お上ではなく市民なのです。

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 では、ルールを変更する意義・意味はどこにあるのでしょうか?
 「独占禁止法」のコンセプトと共通ですが、特定の商品・企業が市場を独占すれば、商品を買う顧客にとって選択の自由度がなくなりますし、企業同士で切磋琢磨して技術・改革をドライブするモチベーションも下がります。また、スポーツでも同様に同じチームばかりが勝っていると興行として盛り上がらなくなり、ファンもしらけてしまいます。そこで、ルールを変更して独占や勝ちすぎを緩和・調整する戦略に出る、という訳です。即ち、独占がマーケットメカニズムを不健全にしたり、スポーツの興行性を低下させると、その領域の発展を阻害し、顧客やひいては豊かな社会の利益を棄損する、という発想です。
 「ルール」などの制約が、新たな発想による人・企業にとって成長努力を生むためのモーティブフォースになりうる、というわけです。競争や競合が改革と発展につながる唯一の手段であること、また、顧客の利益、社会の利益が最優先されている、という視点は21世紀のグローバル社会で、我々日本人も学び、身につけて行かなければならない価値観ではないでしょうか。
 日本人の価値観では、「道」とつく競技の目的は心身の鍛練にあるのであった、そこに試合を興行化して、顧客の楽しみにする要素は少ないと考えられます。また、「道を極める」のは、求道者一人一人の価値観に立脚していたり、求道者と自然との対話の中から高めて行くものであって、顧客から離れれば離れるほど、高みに昇るほど素晴らしいと考えられており、そこには顧客主義 customer’s focus という視点はありません。
 このグローバル化の時代、「型」を考え、習得し、その意義や価値を体得していく上でも、「グローバルの顧客」を意識して「型破り」にチャレンジしてゆく視点が、ガラパゴス化しないためにも、求められているのでしょう。Global customer は diverse で、「型破り」の方向、正解は一つではありません。地域・文化それぞれに customize した「型破り」が考えられます。
 「ルールを決める」ステージに参加する(TPPも同じです)ところから、戦いは始まっています。一人称の視点で「求道者」になりがちな我々日本人にとって、高みに昇るだけではなく、顧客の立場に立ち戻って、顧客と社会の目線で「型破り」挑戦してゆく眼をやしなってゆく必要性に気付かされます。
 こういった「型破り」に挑戦する人材を育成してゆくためにも、結果・成果だけを見るのではなく、「型」を体得するプロセスを評価し、そこから得た competency を評価し、いろんな顧客・地域・文化に合った「型破り」に挑戦する多種多様な人材を育成することに今コミットしなければ遅れをとってしまうでしょう。金太郎飴のような人材育成を行っていたOJTのことは、頭から消し去って、一刻も早くスタートを切る必要がありそうです。





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ダイバーシティが進んで欲しい所

日ごろ、営業活動でもないですが、各種業種の企業の方々とお付き合いさせて頂いていて「これは、女性に活躍して頂いて、もっとダイバーシティ/多様化が進んで欲しい」と思う瞬間が度々あります。それは、所謂「おやじ」と話している時、いかにも話すだけ時間と労力の無駄だなー。。。。と感じてしまいます。
では、ここで「おやじ」と言っているのは、どのような方でしょうか? 一言でいうと、「考えや行動を変える、リスクを取る気持ちのない」人といえるでしょう。何も変わらず、今のままの状況がず~っと続いていて欲しい、と考えている人でしょう。仕事を楽しんでいない人でしょう。こういう方々にはどのような特徴がみられるのでしょうか、挙げてみます。
  ・ 言うだけ/考えるだけで、実行に移さない
  ・ 「何かやりたい」と言って、今やっていることに真剣に取組んでいない
  ・ 説教好きで、自分の型にはめたがる
  ・ 相手を認めず、説教して自分の優位性を保とうとする
  ・ 仕事とプレゼント(例えばお中元・お歳暮)を別々に考えている/プレゼントは手段
  ・ 他人にご馳走して、恩きせがましく振る舞う
  ・ 偉い人には感謝するが、自分の近くの人に感謝しない
  ・ 「部下に面倒みてもらっている」と思ったこともない
  ・ 仕事を楽しまず、仕事以外に楽しみを見出そうとする
  ・ 勝ち負けにこだわるが、そのプロセスにこだわらない
  ・ 幸せを探していて、「今」に幸せを感じない
等々、サッと挙げても10以上列挙できます。
 では次回以降、改めまして、「おやじ」のおやじたる所と、ダイバーシティが進んで欲しいと感じる所を幾つか話してゆきたいと思います。

Specialist とGeneralist のバランスが変化してきている

 新年明けましておめでとうございます。
 2013年の年頭に際し、皆さまのご健康とご多幸を祈念申し上げます。
 皆さまにおかれましては穏やかな新年を迎えられたこととお慶び申し上げます。今年の三が日は、東京では天候にも恵まれ、また暖かな日が続いておりました。箱根駅伝は時には20m/sec にもなる強風に悩まされていましたが、我々は風は強いものの体感温度もさほど低くはなくまずまず穏やかな正月に恵まれました。
旧年中は公私ともお世話になり、誠に有難うございました。このblog も目を通して頂いた皆様にも深く感謝申し上げます。
 2012年は、歴史に刻まれる激動の年でした。世界は、欧州経済危機、新興国の経済成長に歯止めがかかり、益々困難な時代へと突入しました。一方、個人レベルでも IBM のワトソン君に代表される人工知能の急速な発達により、産業用ロボットの時代から、ホワイトカラーの仕事までがロボットに置き換わる時代へと移行が始まりました。
 過去の経験の通用しない難しい時代、それでも経済成長には価値創造の求められる時代、これほど「人財力」が渇望された事はなかったのではないでしょうか。2013年は、そんな未体験ゾーンに向かい合う「個人の力」が求められる年になると思います。また俗に「蛇年」は大事件の起こる年とも言われています、今年もどのような変化に出会う事ができるのか楽しみです。
 変化の激しい時代、過去の経験では捉えきれない時代、引き続き「今、何が起こっているのか?」「何故、そのような変化・方向になるのか?」、皆さまと共に考えてゆきたいと思います。
本年もご指導・ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。

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 昨年末の出来事で、松井秀喜選手の引退が記憶に新しいと思います。12月29日付け日経の春秋欄に、ある対談における次のような長嶋茂雄さんの言葉が紹介されておりました。この記事を読んで、ビジネスでも同じと考えさせられましたので、少し取り上げてみたいと思います(*1)。
===QTE===
「ピッチャーというのは、ノーマルな人間は大成しませんね」。こう言って長嶋茂雄さんが続けた。「われわれ(打者)は逆に、ノーマルじゃないと仕事ができないんです。相手があって商売が始まりますから」。
===UNQTE===

 これまで「ノーマルではない」異才を放つ人材は、ビジネスの領域ではクリエーターや技術者に、ビジネス以外では芸術家といったところに求められていました。強烈な「夢」を見れないと、未来が描けないからでしょう。その意味では、国家の大統領も「強烈な夢」を描けないと務まらないでしょう。元来、大統領と首相、企業ではCEOとCOOに必要な素質を考えると、大統領/CEOは「強烈な夢」を描き、国民に伝えるスキルが長じていないと務まらないはずです。一方、首相/COO は、大番頭の立場で現実的に「やるべきことをやり遂げる」のが仕事です。
 皆さんは、インパクトのある「夢」を描いておられますか?「今、目の前の出来事」かと錯覚するくらいに、隅々まで明確に夢をリアルに描いておられますか?リアルな夢だから実現できるのか、実現に近づいているからリアルに描けるのか、どちらが卵でどちらが鶏か区別はつかないですが、夢は意識的に描かないと近づいてこないと思います。

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 話題がそれましたが、「ノーマルではない」異才を放つ人材の話しに戻しましょう。
 今の時代、このように求められる人材の状況が変化してきていると私は感じています。過去の経験の通用しない「暗黒大陸」に一歩を踏み出すために、過去の経験の通用しない「修羅場」に向かうためにも、個々の人材の「卓越した力」が必要になってきているのではないでしょうか。
 即ち、チームに(一人でやる仕事は殆どない)このような尖った能力をもつ人材、「ピッチャー」タイプの人材が複数必要になってきているように変化してきたと感じられます。個々人の立場から見ると、尖った、卓越した力がないと生き残れない時代になってきている、とも換言できるでしょう。では、このような「ピッチャー」ばかりのチームの中で、ノーマルな「打者」タイプの人材はどこにいったのでしょうか?
 これが、ファシリテーターという役割に凝縮されるようになったのではないかと考えます。(勿論、原子核が陽子ばかりでは成り立たず、中性子が必要であるのと同様に、チームの中にもノーマルタイプは必要です)
 即ち、優秀な常識人であるファシリテーター/(チームの)コーディネーターがいないと、ピッチャータイプの尖った人材が生きてこない。力を発揮する場を設定することができないのです。
 ただ、ここでファシリテーターが単なる「常識人」と理解してしまうのは、誤りです。高校野球で「エースで4番」の人材がプロに集結し「ノーマル」になるように、ファシリテーターも「エースで4番」人材が昇華した「常識人」たる多能工人材と理解する必要があります(*2)。

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今の時代、最も必要とされ、また最も欠けているスキルといえば、「コミュニケーション」のスキルが頭に思い浮かびます。とはいっても、「エースで4番」の人材が集った中で最も尖った「ピッチャー」タイプの人材一人一人に、云わば真逆のスキルである「コミュニケーション」スキルを兼ね備えてもらうのは、なかなか難しいというのが現実です。
 そこで、彼らを活かし、モチベーション高く、パフォーマンスを発揮してもらうためにも優秀なファシリテーターが求められる時代になったと考えます。卓越した、尖った「ピッチャー」タイプの人材を得られないとブレイクスルーの難しくなってきた時代に、彼らをチームの中で活かすためにも欠かせないのがファシリテーターです。チームではなく、個人のマネジメントの例では、タレントマネジメント(メディアに登場するタレント人材のマネージャーをイメージしてみて下さい)に同様のスキルが求められるでしょう。マネジメントの対象が一人か、複数からなるチームか、といった違いだけです。ファシリテーション、マネジメント、リーダーシップといったスキルの重なるところです、重複部分のspecification を考えると、コミュニケーションスキル、決断力etc が挙げられるでしょう。
 チーム、企業、社会の中におけるSpecialist とGeneralist のバランスが変化してきたことを改めて認識させられました。皆さんの会社で、もしくは周辺で、「これは凄い」と感じるファシリテーターが頭に思い浮かんできますか?


【参考】
*1 日経記事(2012年12月29日)

*2 ビジネス環境の複雑化した時代、マルチプレーヤーが求められています




ビジネス環境の複雑化した時代、マルチプレーヤーが求められています

 ビジネス環境も複雑化し、変化の加速化した時代、I型、T型、Π型人材という表現を皆さんも聞かれた事があると思います。縦軸は専門性(スペシャリスト)、横軸は汎用性(ジェネラリスト)を表しているのですが、I型はスペシャリスト・タイプ、T型はジェネラリストであって卓越した専門領域も持っているタイプ、Π型はジェネラリストであって複数の専門領域も持っているタイプを示しています。
 21世紀に入って10年余り、多様性( diversity )が明確に重要視されるようになってきました。一歩先はどうなっているかも見えない「暗黒大陸」に踏み出すには、過去の経験・成功体験はそのままは通用しないでしょう。仮説検証を繰り返して進むべき道を判断し、更に検証を繰り返して進む力が求められます。逆境に立った時、崖っぷちに立ったた時、人は必ず己の「長所」を最大限に活用し、伸ばしてチャレンジします。「短所」を補って乗り越えられる程度の試練は、試練とは言えません。
 このような長所の尖った、有能な人材を活かすには、一つは個々のメンバーのリーダーシップを磨く、もう一つは尖った人材からなるチームをマネージしてゆく有能なファシリテーターが求められています。ファシリテーターのリーダーシップと言っても良いでしょう。このファシリテーターは、T型人材やΠ型人材といったマルチプレーヤー(多能工)でないと機能しないと考えられます。即ち、チームの対応するべきビジネス環境を理解できる幅広い視野をもち、その環境の中で個々のメンバーの資質を理解し、引き出し、メンバー同士やメンバーと環境との「関係性」をマネージできる力が求められています。このようなファシリテーターが不在では、折角の多様化したチームも多様化ゆえにバラバラになってしまい、パフォーマンスを出せない可能性が高いでしょう。

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 先日、ある中小企業経営者向けの勉強会の場で、産業医に関する話題が挙がりました。労働安全衛生法によると、50人<規模の事業場(一つ一つの支店、工場を事業場と呼びます。企業規模ではありません)で委嘱産業医を、1000人<規模の事業場で専属産業医が求められています。因みに、1996年の労衛法の改正により、それまで医師であれば行えていた産業医の職務は、職場内における労働環境やそれから生じる疾患との因果関係などの基本的な知識を有する必要性などの理由から、資格制度となりました。
 では、一体産業医とは何をする人なのでしょうか?
 産業医の代表的な仕事は次の4つと言われています:①職場の定期巡視、②定期健康診断結果チェックとその後の面談などによるアドバイス、③衛生委員会への参加、④過重労働者の面談。
 この内容から考えられる事というと、まずその職場々々の特性によってどのような物理的なストレスが掛っているか、職場を理解し、実際に巡回して確認すること。そして、その物理的ストレスの影響を確認し、ストレス軽減の対応をすることが仕事と考えられます。この内容は、従来の有害物質によるchemical hazard を念頭にその人体への影響を「症状」でモニターしていた時代の名残と言えるでしょう。通常の外来診察で、気をつけて診察している訳ではない皮膚症状などが想定されています。現代では、chemical hazard 対策も行われていて、症状によるモニターが機能している例はまず皆無でしょう。医師が診察するよりも安全委員の方が良く理解して対策も徹底しておられます、最後に negative data の確認を医師が行う意味は残っていると考えられます。
 この目的では、扱っている化学物質とその人体への影響の知識が必要、ということです。
 次に、④は精神的ストレスが想定された項目です。今の時代、物理的ストレスは解消されている訳ではないものの、主な社員のストレスは職場環境・精神的ストレスによるストレスとなっていると考えられます。では、職場や社員の精神的ストレスを評価するためには、産業医にはどのような知識とスキルが求められるのでしょうか?

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 まず、その企業のビジネスを理解し職場を理解することが必要で、最低限の一般的なビジネススキルが求められるでしょう。ミクロには、現場・人事・管理監督者とコミュニケーションをとり、社員がどのような状況で仕事をしているのか自らPDCAサイクルを廻して問題点を把握できるだけのスキル(仮説思考)を持っていることが望ましいでしょう。
 しかし、こういったビジネススキルを医師に求めるのは過剰要求です。だからこそ産業医という「普通の」医師とはことなる職種があるとも言えるのですが、元来はビジネススクールで問われる内容なので、これを産業医に求めるのは無理があるでしょう。即ち、産業医は、担当する企業のビジネスや職場の特性を理解し、組織や社員のどこにストレスが掛っているかを理解して、モニターや対策することが求められるのですが、現実には無理のある要求ということになりそうです。元来は、工場で扱っている有害物質を理解することが求められていたのですが、現在は企業の現場が変化することによって要求も高くなったと言えるでしょう。
 このように医師にビジネススキルというマルチプレーヤーたることが求められるのですが、この要求に見合う産業医はごくわずかでしょう。

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 更に、面談や上記のような社員のインタビューには、医師にコミュニケーション能力が求められます。元来コーチ、カンセラー、臨床心理士といった職種に求められているレベルのコミュニケーション能力を医師に求めるのは、やはり過剰要求と考えられます。
 我々コーチは、「聴く」プロですが、この業界のベテランコーチ達も口を揃えて「何年やっても、何も聴いていない」と仰っておられます。正に、正論でしょう。このblog でも、プロの指南役と呼ばれた囲碁の藤沢秀行名誉棋聖の「わからない、ということがわかるためには、よほどの勉強が必要なのだ」という言葉を紹介しましたが、共感できる内容です(*1)。
 現代の多様性(diversity)の重んじられる時代に、コミュニケーション能力は重要なスキルであると考えられますが、そのトレーニングにはかなりの本気度と時間を要するのが実態です。コーチやカウンセラー、臨床心理士に求められる「聴く」力、コミュニケーション能力というと一生勉強です。勿論、患者の立場としては、医師のコミュニケーション能力が高ければとても嬉しいと思いますが、期待にこたえられる医師はやはり限られるのではないかと思います。

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 ここで、「②定期健康診断結果チェック」についても少し述べておきましょう。「検診のデータをチェックして、異常の認められた社員を指導する」業務は、まだ検診センター、人間ドックなどが十分普及していなかった頃の名残でしょう。検診センターといった予防システムが発達した現代では、検診センターの医師の仕事と考えるのが妥当でしょう。その後のフォローも病院で喜んでやってくれます。
 例えば、肝機能のデータが悪かった社員を例に考えてみます。検診センターの医師なら、検査異常値をみて、どうしてそうなったかを本人に問診します。その結果、「最近お酒を飲む量・頻度が増えた」と患者が答えたとしましょう。そこで医師は何を言うかというと、今の状況を続けると脂肪肝、肝硬変などのリスクが高くなりますから、飲酒を控えて下さいと本人にアラートを出します。要は、「あなたの身体がどうなっているか」「どのようなリスク評価をするか」を本人に告げて、その対処法を伝える訳です。
 これが、産業医の立場だと「なぜ飲酒量が増えたか」という原因まで踏み込まないといけません。即ち、職場や私生活で何が起きているか、どのようなストレスに晒されているのか、ストレスが増えているのか減っているのか、ストレスを増大させている原因は何か、といった職場環境(私生活かも知れませんが)について第三者の立場で尋ねるということす。「第三者の立場」と断ったのは、もしストレスの原因が上司との人間関係だったりすると、直属上司には訴えられないし、人事に直接申し出ても結果的に自分の評価が悪くなったり将来の昇進などに影響しかねないため、会社にも言い出せない状況もありうるからです。一般の外来診療でも、ここまでやってくれると嬉しいですね。
 しかし、ここまで踏み込むには、ビジネスや組織の力学についての知識が必要ですし、コミュニケーションスキルも必要です。
 実際の産業医も、多くは普通に患者さんを診たり、病気を治療することに興味がある訳で、別にビジネスに興味を持っている訳ではないでしょう。誰が言い出したのかオリジナルは不詳なのですが、「小医は病を治し、中医は人を治し、大医は国を治す」という言葉があります。ネットで見る限りですが、何でも戦前に東京帝国大学医学部の和文独訳の入試問題としても出題されたことがあるそうです。実際には「病を診て、人を看ず」という状況にしばしば陥っている訳ですが、確かに「人を看る」には、人生や各職業を理解できるだけの豊富な引き出しが求められるでしょうし、本音を引出せるコミュニケーション能力も求められます。
 人を看ようとする意志がないのではなく、そのためには、それ相応のスキルが必要と言う訳です。中医になるには、今の時代だとマルチプレーヤーの資質が求められます。

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 このように、現代の産業医には、臨床医のスキルのほかに、組織とビジネスを理解できる力、コミュニケーション能力を求められています。実は、マルチプレーヤーなのです。しかし、そのような認識の産業医は限られていると思いますし、もし認識はあったとしても、それだけのスキルをトレーニングしている医師はそういるものではないと考えられます。
 かつての高度成長の時代、やることが決まっていたため、日本の組織は同種性の高い金太郎飴のような組織で、マンパワーの必要な個所にリソースのリロケーションを行える柔軟性の高さとサブメンバーの質の高さが強みでした。
 これに対して、ビジネス環境が複雑化した今の時代は長所の際立った「多様性」の高い組織と、これを活かせるだけのリーダーシップ or ファシリテーターが必要です。ここでも、広い視野を持ったマルチプレーヤーが求められています。このファシリテーターが広い視野をもっていないと、個々のメンバーがサイロに動くようになり、各人の長所を引き出しシナジーを生み出すことはできないでしょう。
 実際には、このようなマルチプレーヤーたるには、生涯勉強を続けることになります。過去の日本では、経験値を重視し、自己学習により将来起こり得るリスクに備えるという文化ではありませんでした。相変わらず、自分の10年前の成功体験を部下に押し付ける上司が見られます。大学新卒の就職希望先も「寄らば大樹の陰」と大企業、とまだまだパラダイムシフトが不十分な状況にあります。
 一方世界では、組織に頼らず個の力で生き抜いて行く逞しさが求められています。これからの時代、グローバルで活躍するには、一つの専門性頼らないジェネラリスト、マルチプレーヤーを目指して生涯勉強を続けて行く覚悟が一人一人に求められるでしょう。

【参考・引用】
*1 多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない (11/24)




大企業で働くリスク

 2014年春の新卒就職活動がスタートしました。就職活動期間がいくらかは短縮されたとはいえ、学生は貴重な大学生活の時間を削って就職活動に取り組んでいます。その行動からは、「企業に就職することが人生のゴール」と言わんばかりのメッセージが伝わってくるようです。このような就職戦線に参加しないと就職機会を奪われてしまうので、「おかしい」と感じながら時間を割いて/取り組んでいる学生もいることを期待してしまいますが、今回はいわゆる就活の目的ともなっている「大企業で働く」キャリアプランの意義について考えてみたいと思います。
 少し古いデータで恐縮ですが、2010年の記事で「就職活動中の大学生(大学院生を含む)は、どこの会社に就職したいと考えているか」を見てみると、文系男子で大手商社や金融関係、理系男子で大手メーカー、といずれも大手がトップテンを占めていました(*1)。その一方、フォーブス日本の富豪40人にランクされているような、ユニクロ、ソフトバンク、楽天、グリー、といった企業は人気がないようにみえます(*2)。ユニクロ(資産 no.1 柳井社長)などは、学生の皆さんも一度はアルバイトした経験があって、余りの過酷な労働条件と店長の悲壮な表情を目の当たりにすると、エントリーする気がしなくなるのかも知れません。結果、優れた人材が確保できていないことが、柳井社長が後継者選びの苦境から抜け出せないことに間接的に影響しているのかも知れません。
 またもう一つ、この就職希望企業ランキングに表れている大企業志向からは、「今が旬」の企業を選んでいる姿が伝わってきます。どちらかというと学生本人よりは、親の考えが結果的に反映されているのかも知れません。いずれにしろ、「 20年、30年先に良い状況になっているのはどこの企業か?」というイメージは伝わってきませんが、学生にとってはこのように「我が国の未来」を共に語ることのできる社会人はまずいないのではないのが実情ではないかと思います。

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  大企業では、入社後責任あるロールを担うまでに長い時間/年月がかかってしまいます。何等かのdecision making に関われるようになるのは部長となる40代~50代、それまでは「仕事を覚える」という名目の長い見習い期間が続くとも言えるでしょう。即ち、入社してから約20年間厳しいビジネス環境の下で仕事を経験していない場合も多いではないでしょうか。成長機会の期間は、上から言われた仕事を、粛々と何も考えずに取り組んで、試行錯誤を仕事の上で経験することなく、部長になって判断能力を求められる、という企業も多いのではないかと思います。
 もちろん、商社の海外赴任などこの状況に当てはまらないケースも多々あります。このグローバル時代、例えばYKKのように、新卒入社は若いうちにまず海外に赴任してもらうというキャリアプランを採っている企業もあります。YKKの場合は、現在の主な市場が海外に移行しているというビジネスモデル上の事情もあるのでしょう。
 その一方、中小企業においては、新しいビジネスに対して経験値のある社員がいない、元来リソースが不足していて一人二役、三役も担当する、などと若いうちからチャレンジングな経験を積める余地も高いと思います。現代のビジネス環境では、過去の経験値が使えない、ゼロベースで考える必要のある状況に直面します。しかし、まだまだ「過去の成功」にとらわれて対応しているケースがまだまだ多く散見されますが、「過去の成功」は忘れて、未知の世界で、ゼロベースで問題解決を図る、「そんなこと言われても、誰もやったことないよ」と言って若い人材も登用できる中小企業の方がチャレンジングな取り組みができるかも知れません。

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 企業規模が大きくなると、利益や付加価値創出に関係しない業務を担当する社員が増えてきます。営業とマーケティングは直接企業の売上・利益につながるプロフィットセンターにおける仕事ですが、間接部門を始めとしてコストセンター部門で仕事をしていると、業務のための仕事になりがちです。
 本来は、「コストセンター」とは呼ばれていても、例えば人事でも付加価値創造に貢献することは可能です。人事評価制度をデザインするにしても、営業部門社員が売上増につながる「行動」をとることを評価するシステムを改善提案することにより、売上・利益につながるといった貢献が可能になります。このように、コンピテンシーも、ビジネス環境の変化や企業の事業プロファイルの変化に合わせて常にデザインし直す必要があるでしょう。今のビジネス環境と有効な行動は何か、その行動を引き出すコンピテンシーは何か、と設計するには、人事部門の社員でも経営に関わり、現場でステークホルダーに対してインタビューする等によって現場を理解し、マーケティングを理解し、関係部署を巻き込むことで、目標達成するだけのリーダーシップを発揮してゆくことが求められます。
 このような経営的な視点を欠いてコストセンターで仕事のための仕事に没頭している社員も多いのが実態ではないかと思います。それだけの人の雇用を確保できることが、大企業のビジネスモデルの優れた点ではあるものの、経営が悪化する可能性など将来に渡って雇用が確保されている訳ではありません。このような仕事のための仕事に没頭していて、スキルの獲得など自分の価値を高めていないのがキャリアプラン上で大きな問題です。
 皆さん「パレートの法則」を耳にされたことがおありでしょう。企業においても、大体2割の社員によって8割の利益が生み出されていると考えられています。社会全体でも、アメリカだと1%の国民に資産の約17%が集中しています(*3)。その内容は、かつては大富豪の資産と投資運用収入であったのですが、現在は企業のCEOの年収など実報酬が中心となっています。日本でも、高所得者1%の所得占有率は、日本でも約13% になります(*3)。世界全体だと、マッキンゼーの調査によると、富の約4割は1%の億万長者が保有しているそうです (*4)

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 チャレンジングな、結果が問われる仕事に取組める機会が少ないことを、大企業に働いてキャリアプランを考える上で自覚する必要があると思います。自分の価値、特に市場価値を高める機会が少ないとも換言できるのではないでしょうか。必死に挑戦しなければ達成できない仕事ではなく、粛々とこなしていればできるレベルの仕事を一定期間以上続けていると、知らず知らずのうちにその人の可能性を狭めてしまっています。
 自分の実力以上の仕事にチャレンジしている人は、「結果を求められる重要な仕事」と「時間をかけるべきではないインパクトの低い仕事」を区別して、優先順位をつけて業務に取り組んでいます。一方、粛々とやればできる仕事ばかりしている人は、大事な仕事もそうでない仕事も、大所高所から仕事の優先順位を見極める必要はなく、すべてにおいて何も考えずに重箱の隅をつつくような作業に没頭してしまう癖がついてしまいます。このように、全力を出しきらなくてもできる仕事を何年も続けていると、知らず知らずのうちに保守的になり、目線も低くなりがちです。また、自分の実力を大きく超える仕事にチャレンジしている人は、日常の仕事から貪欲に学ぶファイティングポーズを取り続けないと、成果達成に必要なスキルを学ぶことができません。
 このように、常に「学びのファイティングポーズ」を取っているからこそ、行動から学ぶからこそ自分の価値を高められるのであって、社内研修や座学に頼っていても自分の価値を高めるだけのスキルは身につかないと感じます。生きた「学びのファイティングポーズ」を取り続けられる環境を、あなたは創り出せていますか?

【参考資料】
*1 大学生に聞く、就職したい会社はココ

*2 フォーブス日本の富豪40人(2012年)

*3 高額所得者の所得シェアの長期推移

*4 世界の富の約4割を1%の「億万長者世帯」が保有、米調査

*5 学生の「大企業志向」は「起業」よりリスク!? “失敗したくない”若者が日本に増えた理由








ビジネスモデルの変化が加速化する時代

今世紀になって、ビジネスモデルの変化、組織構造の変化、キャリアモデルの変化が著明になってきています。

 営業は従来のPush型の営業から、Pull型の営業へと主流が移りました。特に、インターネット環境が急速に市民に普及してからは、HPを活用したPull型営業に磨きをかけずにビジネスは成り立たなくなってきています。Push型営業の時代というのは、戦略は企業の経営層がたてて、戦略に従って「モノを売る」、そんな時代でした。それに必要な組織はというと、ピラミッド型組織が機能していました。
 ピラミッド組織では、役員や経営層が戦略を立てて、商品の生産に投資し、商品をいかに多量に企業の論理で売りさばくかが最大の関心事となっていました。顧客に合わせて商品を選べるように、機能別・価格別に幾つかの商品のラインアップは取り揃えるものの、テーラーメイドで改変するなどということはありませんでした。時代も、高度成長期を思い出してみると、欧米に追い付け追い越せで、何を造り何を売るか欧米の前例に従っていましたし、消費者も欧米の生活を見てまだ満たされていないニーズが何かをイメージしていました。3C(クーラー、カラーテレビ、自動車)と称されたように、まだ商品が市民に行き届いていなかった、市民のニーズを満たし切れていなかった時代でした。
 このピラミッド組織では、部課長クラスは、それぞれの地域における販売戦略を立て、顧客リストを作成し、企業のたてたマーケット戦略を地域に最適化するのが役割です。更に組織の末端にあたる営業マンは、何をどのように売ってくるかを指定されて、それに従って訪問販売などを掛けてゆきます。
 例えば、車はかつては訪問販売が主流でした。3年車検の近付いてきたお宅に訪問販売をかけて、何度も足を運び、企業の販促資材を活用して押し切る、こんなスタイルだったでしょうか。株でさえ、証券会社が設定した「銘柄」をもって、顧客を口説いて回る、こんな営業スタイルが行われていました。一見、儲かる「推奨銘柄」情報を提供しているように見えて、会社都合の販売だったようです。ファイナンシャルプラナーに代わって、顧客の生涯の資産プランを考え、「どこまでリスクを取れるのか」「長期運用なのか、短期で廻すのか」などといった顧客の状況を考慮して銘柄を推奨していたのではなかったように思われます。
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 このPush型営業のビジネスモデルを効率よく運営したのが、ピラミッド組織でした。工場をみても同じパターンが見られます。マネジャーがいて、生産状況の管理をしていますが、直接作業している作業員は、決まった作業だけを行います。要求されるスキルも限られているために、作業を習熟するのにかかる時間も少なく、ほぼ即戦力に育成できる、ある意味で素晴らしいシステムです。その反面、トラブルが起こった場合、また生産工程がスムーズに流れなかった場合に、作業員の方々に判断する権限はなく、すべての判断がマネジャーに集中します。マニュファクチャリングにおいても、近年作業工程は複雑化してきたために、マネジャーもトラブルシューティングまで十分には理解できていない工程があるのが実態でしょう。
 このように、ピラミッド型の組織では、新入社員は単純な(?)役割からスタートして、ピラミッド構造においてポジションを上げてゆくに従って責任も重くなり、要求されるスキルも増えるという解り易い組織構造でした。また、終身雇用にも支えられて、キャリアがとても良く可視化された構造になっていたとも言えるのではないでしょうか。
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 今は、自動車を売るといっても、訪問販売の時代ではないでしょう。宅急便を装って暴漢が訪れる時代、「トヨタです」「ニッサンです」と行ってもドアを開けてくれなくなってきています。
 顧客は、CMやHPで情報を取って、何らかの関心を抱いて、ショウルームを訪れます。ここで、企業戦略に従ってPushを掛けても、まず誰も反応してはくれないでしょう。営業マンは顧客の関心事やニーズ・ウォンツを聴き、本音で何を求めているのかを捉えて、顧客の心の琴線に触れるソリューションを提供して初めて商品が売れるというわけです。
 この現代の状況において営業マンに求められるスキルは、顧客とのコミュニケーション能力であり、顧客の関心・問題に対してソリューションを提供する「問題解決能力」と考えられます。即ち、専門性が重視されるようになるため、営業部隊も専門家集団によるフラット組織が必要となります。顧客にソリューションを提供するための専門家のメンバーには、営業の他に場合によっては開発の人間も必要になることもあるでしょう。
 専門家集団であるフラット組織では、第一線に権限移譲が行われていないと、ソリューションを提供することができません。一つ一つのケースで提供するソリューションが異なるので、組織の上に上げて判断を仰いでいたのでは(また、上もケースごとに判断を下せないでしょう)ビジネスチャンスを逃してしまいます。
 この専門家集団といえる第一線の組織におけるキャリアを考えると、専門性の育成になってきます。ジェネラリストとしての能力開発と共に、社員の専門性を1つ→2つと増やし、それを維持してゆくことが重要です。
 この変化のスピードの加速化された時代、キャリアを作り上げてゆくのは、新しい専門性を獲得することであり、そのことは即ち「一生涯勉強し続ける」ことを意味しているということです。

 一方で、現在も多くの企業にピラミッド組織構造が根強く残っています。特に、我が国は被雇用者の権利を守る雇用形態になっていることもあり、時代が移っても、かつて築き上げた構造物はなかなか変えることができないのが実情のようです。
 そんなビジネス環境で、「時代の変化」をなかなか実感できていないビジネスマンもまだまだ多いように感じます。

あなたは、自分が変わるために、どこに自己投資しますか?


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プロフィール

scaramouche

Author:scaramouche
I am an Executive coach, Consultant and Negotiator working in Tokyo, Japan. In charge with develop people, leadership management and motivation management, supporting president level, executive level and organization level.
Concurrently a visiting lecturer/researcher in Ohmae Kenichi School of Business.

After earning MD and PhD in medicine, I experienced medical practice as an anesthesiologist and ICU expert followed by scientific research work of molecular biology and molecular genetics. Following academic experiences, I joined to a global pharmaceutical company, and experienced Drug Discovery projects, Biomarker works in global Biomarker group, and Drug Development projects in the global context of drug development. Through my medical and business career, I have shown leadership involving internal and external stakeholders to create the value of projects.

Specialties: MBA (Business strategy, Marketing, and People Development), GLLC Certified Coach, JCA Certified Medical Coach, ABNLP Certified NLP practitioner, JNLPA Certified NLP practitioner, JSNS Certified Negotiation analyst, MD.Sc, PhD (Medical), Faculty Fellow of Pharmaceutical Medicine, Certification by the Training course of Biomedical Ethics and Law (Tokyo University).

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