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2020-04

多様性の時代のOnly one 戦略を再定義する-10年後の医薬品を考えてみて

 製薬業界がジェネリックに振れている。従来の新薬メーカーでも、ジェネリックの売上が新規医薬品の売上を越えるといった逆転現象が見られる時代になってきた。
 一方、新薬はブロックバスター(所謂、大型新薬:年間売上1,000億円以上)の時代が終焉し、ニッチ、オーファンといった市場規模が小さな領域にターゲットを移してきている。ブロックバスターという概念は、糖尿病・脳卒中・心臓病・高血圧症・脂質異常症といった生活習慣病に対する薬剤であった。
 生活習慣病は患者数も多く、罹患期間も長いため売上が伸びたという事情があったため、生活習慣病改善薬が一気にビジネスとして注目された。また生活習慣病は、人類の文明が発展し生活が豊かで便利になるにつれて患者の数は増加傾向を示していた。しかし、生活習慣病薬市場が飽和したため医療用新薬開発合戦は終焉し、現在では血栓阻害剤が最後のブロックバスター医薬品ではないかと考えられている。
 もっとも、抗がん剤の改革が進み、外科手術で根治できない転移の進んだがん患者さんにも有効で何年も投与して生存期間の延長が達成できるようになると(例えば、5年生存率向上)、抗がん剤のブロックバスターが出現する可能性/希望が出てくると思われる。
 新規医療用医薬品は販売後8~10年の再審査期間で特許が終了し、薬の価格(薬価)も下がり、手を変え品を変えパテントを維持するものの、10年程度でジェネリック医薬品に置き換わる対象となってしまう。
 現在、ジェネリック医薬品を開発・販売するモチベーションが高いのは、売上の大きなブロックバスターの特許切れの時期が到来し、これらの売上を置き変えることができるからである。ということは、生活習慣病をターゲットにしたブロックバスターのジェネリックが出そろった時点で、ジェネリック医薬品の魅力的な開発ターゲットが底を突くということが容易に想像される。
 かつては、ブロックバスター新薬の開発に振れ、今はジェネリック医薬品(の開発)に振れている製薬企業は、10年後の戦略をどの方向に振るのであろうか?

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 最近の新薬開発でも、なかなか既存薬を越える新薬が出てこなくなったという声をよく耳にするようになった。ちょっと専門的になって申し訳ないのですが、効果を検証するのに、placebo control では有効性を示すことはできる(病気に効いているのは間違えない)が、既存薬を対照とすると優位性を示せない(現在使用されている薬より、「良く効く」「優れている」とは言いにくい)ということである。換言すると、アルツハイマー病/痴呆症や他の精神神経科疾患のようにまだ治療薬の十分とは言えない領域も残されているものの、現在薬剤を開発できる領域/疾患に対する治療薬はほぼ勢ぞろいしているとも言えるであろう。あと、残っているのは治療薬開発の難しい疾患領域と考えられる。

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 ここで、「10年後の戦略」を考えるヒントとして、現代のマーケティングの流れを思い浮かべてみよう。21世紀のマーケティングで特徴について考えてみると、まず第一にPush 型からPull型へ移行した点が挙げられる。ソリューションマーケティングの時代に移行したとも言い換えることができる。顧客の多様性が高くなってきた状況に対して、個々の顧客に合ったbest solution を提供してゆくのがプロフェッショナルと言える。
 医療の世界に当てはめて考えてみると、最終顧客である患者さまに対して best solution を提供するのは担当医師であろう。医師は個人プレーヤーとして患者さんにサービス提供している訳ではないので、solution を策定するチームのメンバーには、看護師、ケースワーカー、薬剤師などが含まれるが、製薬企業の第一線で働く営業がそのサポートに加わることも考えられるであろう。大体、自社薬剤についての情報を持っているのはメーカーにほかならない。

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 次に21世紀のマーケティングの第二点目の特徴を考えるとすると、「強み」を磨きあげNo.1 よりOnly one の世界を築いてゆくことが挙げられる。
 では医療の世界で「Only one を築く」というのはどのように考えてゆけば良いであろうか?単品・一種類の薬剤を磨きあげる(情報を積み上げてゆくことか?)といっても無理があるので、例えば一つの疾患に対してOnly one 企業になってゆくという戦略が考えられるであろう。幸い、ジェネリック医薬品全盛の時代の10年になったことでもあり、例えば糖尿病に対する各種(別々の作用機序)薬剤を一社で揃える戦略が、ビジネス上も可能となった。
 このようにして、ある疾患に対してあらゆる薬剤を揃える。また、自社の薬剤(intervention という意味ですネ)を使用した経験・データから、その疾患に対する理解を一段と深め提供してゆく。という相乗効果を通じて、その疾患と治療法/solution のOnly oneブランドを築いてゆく、という戦略は今後採り得る可能性があるように思える。即ち、Only one は単一の商品という訳ではなく、ターゲットとする疾患に対してOnly one という意味に新たに定義し直すことができるのではないだろうか。
 また、効果の定義と患者さまのbenefit を定義していく上で、薬剤というintervention と評価システムを提供する医療機器メーカーのコラボレーションも、このブランド戦略とシナジー効果が期待できるであろう。
○○病に対するブランディングとソリューションの提供は-現実的には市場規模と疾患メカニズムの多様性から「生活習慣病」を選択することになると考えられるが-21世紀のマーケティングの流れを束ねる良い戦略に聞こえる。

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 一般にOnly one を磨きあげるというと、例えば「一種類のシュークリームを磨きに磨き上げる」といった例が考えられる。上に述べてきた医薬品のOnly one 戦略とどこが違うのであろうか?
 シュークリームは磨きに磨き上げると、パティシエやインタビュー調査した顧客の価値観を反映したOnly one である。つまり、味や食感などが異なる「Only one シュークリーム」が何種類も存在する。医薬品では、例えばフェニルケトン尿症の治療薬といったニッチな疾患が対象の場合ならば、まさにOnly one 戦略と同一の発想になるであろう。市場規模を大きく設定し売上と利益に貢献したい、という欲望があるからこそ、Only one を幾つも取り揃えて、一種類の疾患に対してのシェアを高めるという戦略をとることになる。
 シュークリームに返してみると、シュークリーム好きの人にも好みは十人十色であろうが、そこにOnly one シュークリームを幾つもそろえることによって「シュークリーム好き」のターゲット顧客に対してシェアを高めるという内容になろう。確かに、シュークリーム好きの顧客に「日替わりセット」といった飽きの来ない「ローテーション」をsolution として提案して、毎日シュークリームを買ってもらうといった新たな囲い込みも可能になるかも知れない。

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 長くなったが、もう一つだけ Only one 製品を考えてみたい。皆さんも良くご存じのApple 社の iPhone である。iPhone は正に新しいスマートフォンを定義した「唯一の」Only one 製品であった。かつてのMicrosoft のOSも独占禁止法に抵触しながらも、置き換わるもののなかったOnly one 製品と言えるであろう。
 何故、Only one 製品だったのだろうか? 私は、iPhone が顧客の現状とはかけ離れてた、ニーズ/ウォンツの更に上をゆくコンセプトの製品だったためではないかと考える。顧客の想像を越える価値提供をするので、顧客も実際に使ってみて初めて、その良さを理解できる。Steve Jobs も「顧客は自分に何が必要か教えちゃくれない」という発言を残しているのは、顧客ニーズの遥か上をねらっていたからではないだろうか。
(参考)Seeing is believing vs Believing is seeing
 製薬企業においても同様に、例えば糖尿病に対する薬剤をジェネリック・新薬を取り揃え、その疾患治療に対して過半数のツールを独占して、糖尿病ブランドを確立するといった「囲い込み」戦略を達成することができると、「疾患の本質的理解に迫る」などの価値創造につながり、iPhone クラスのOnly one ブランドを提供できるチャンスもあるのではないかと考えてみた。

 皆さまのご意見は、いかがでしょうか?







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引用したURLにあるお店の分布を見ると、「傘を返却できる」駅に隣接したお店がちょっと少なく感じますが、「親切の提供」「ポイントによる囲い込み」そして「環境にやさしいCSR/社会活動」と、ユーザーのニーズを創り出すことに成功しているように思います。

今度、渋谷に行ったら、この原宿~青山一丁目~渋谷地域を回ってみよう、とちょっとワクワクしますネ。
その時は、またここにフィードバックすることします。

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プロフィール

scaramouche

Author:scaramouche
I am an Executive coach, Consultant and Negotiator working in Tokyo, Japan. In charge with develop people, leadership management and motivation management, supporting president level, executive level and organization level.
Concurrently a visiting lecturer/researcher in Ohmae Kenichi School of Business.

After earning MD and PhD in medicine, I experienced medical practice as an anesthesiologist and ICU expert followed by scientific research work of molecular biology and molecular genetics. Following academic experiences, I joined to a global pharmaceutical company, and experienced Drug Discovery projects, Biomarker works in global Biomarker group, and Drug Development projects in the global context of drug development. Through my medical and business career, I have shown leadership involving internal and external stakeholders to create the value of projects.

Specialties: MBA (Business strategy, Marketing, and People Development), GLLC Certified Coach, JCA Certified Medical Coach, ABNLP Certified NLP practitioner, JNLPA Certified NLP practitioner, JSNS Certified Negotiation analyst, MD.Sc, PhD (Medical), Faculty Fellow of Pharmaceutical Medicine, Certification by the Training course of Biomedical Ethics and Law (Tokyo University).

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